コラム(バックナンバー)
◆「鉄道を仕事にする」ということ(2009.5月)
4月の29日。東京は日本橋まで、落語を聴きに行きました。上方落語の、林家竹丸の会です。
実は彼は僕の中学・高校の同級生。大学卒業後はNHKの記者をしていたのですが、一念発起して、好きだった落語の道へ飛び込んだという奴です。
終演後はやはり? プチ同窓会状態。会うのは高校卒業以来という人間もいて、蕎麦屋で一杯やりつつ、大名刺交換会になりました。みんな、偉くなってたなあ…(笑)
で、そういう場で目立つのは、僕みたいな人間です。中学・高校の頃から「鉄研の土屋」で通っていましたから、「やっぱし、そういう道へ進んだんやね(笑)」ということに…(^^;)
「フリーでやって、食えてんの?」
「竹丸と一緒やで(笑) まあ、ボチボチってとこやね」
「趣味を仕事にできたんかあ…ええなあ…」
「まあな。せやけど、趣味を仕事にするんも、辛いもんがあるで」
「何で?」
「これまでストレス解消のための趣味やったことがな、180度変わって、ストレスの源になんねんで。そら、しんどいもんがあんで。やり甲斐はあるけど、どんな仕事でも、仕事はやっぱし仕事やんか」
「せやなあ…」
こういうやりとりは、しょっちゅうしてるんで、慣れた?もの。相手も、サラリーマン生活20年とかになってるんで、こう説明すると納得してくれます。
出版業界は、外からは「華やか」と見られているかもしれませんが、実態は体力・気力勝負の、厳しい世界だと思います。休めない、眠れない、ストレス多い、収入少ない…
「好きじゃなきゃ、できない」。そんな仕事です。
でも、「好きだから、できる」というものでもない、と思います。
昔、某鉄道雑誌の編集者と雑談をしていた時のこと。
ちょうど、その会社が求人を出している、という話になって、彼と僕との間で意見が一致したのが、「鉄ちゃんを編集者に育てるより、編集ができる人を鉄ちゃんに仕立て上げた方がよほど早い」ということでした(笑)
要は、鉄道がいくら好きでも、それは給料を出して雇うための十分条件にならないのです。
いちばん必要とされることは、(中途採用なので)編集者として充分な経験と“スキル”にほかなりません。
面接には、案の定、「鉄道が好きです!」「鉄道のことなら詳しいです!」とアピールする面々が押し寄せたそうですが…
僕は、おおまかに言えば、出版社勤務から始まって、会社を辞めてフリーライターになりました。「フリーライターへの道」としては、オーソドックスな方でしょう。
そして、鉄道ライターになる以前に、ライターになりました。
原点は、『ぴあ』関西版編集部で、とにかくスケジュールを厳守して2週間に1冊、必ず雑誌を出すこと。文章をどう書くか。編集はどうやればいいのか。そんなことを徹底的に叩き込まれました。あの時期があるから、今の自分があります。感謝しています。
今でも覚えていますが、当時、毎月の残業時間は100時間超が普通で、200時間に迫ることもたびたび。100字ほどのコラムを書くだけなのに、何度も何度も書き直しを命じられ、徹夜させられたこともありましたっけ(当然、チェックをする副編集長にもつき合っていただきました)。口惜しいから、こちらも必死になって文章の勉強をしましたけど。
ライターとして。編集者として。20歳代の頃から、多少なりとも努力して“スキル”を身につけていたから、僕は今の鉄道ライターになれたのだ。そう、確信しています。
決して、「鉄道が好きだから」なれたのではありません。
当たり前でしょう。鉄道ライターも、鉄道カメラマンも、鉄道雑誌の編集者も、間違いなく「職業」なのです。
世に、転職・就職情報はあふれていますよね?
それらをよく見れば、職業に就くために必要なのは「スキルと、努力と、多少の運」であることは分かると思います。「好きだったら、なれる」とは、書いてないと思いますが。
今、“鉄道出版業界”は人手不足です。
まず、ライター、カメラマン、デザイナー、編集者として、充分な実績をお持ちの方。
そして、その上で、「鉄道は好きなんだけど、これまで鉄道関連の出版には縁がなくて…」という方。チャンスだと思いますよ。
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